【完】キミにぞっこん
「だって、さっきあなたの彼氏に会ったものあたし」


「え?」



〝会った〟



ただの偶然あったのだろう。
ここに出入りしてる以上そんなの当たり前だ。
でも、偶然じゃない可能性の方を考えてしまう。



「そんな不安そうな顔しなくても!あたしも星那もお互い好きじゃないから大丈夫よ?」



あたしの頭を撫でる。



「…はい」



〝星那〟



この人が呼び捨てにするのをききたくなかった。

嫉妬の心がうごめく。



「不安なら本人に言ったほうがいいよ。あたしたちあなたが不安になることはなにもないから」



それだけ言って、エレベーターを降りる。



〝あたしたち〟


その言葉もグサリとあたしのこころにはささる。


なんだろう。
なんて言ったらいいかわからないけど。

星那に会いたい。
星那からもらう言葉はいつだってあたしを安心させてくれるの。

彼はあたしの特効薬なんだ。



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