【完】キミにぞっこん
「気持ち聞いてあげたほうが諦めるかなって」


「まぁ、聞こうにもあれ以来ハッキリは言われないしな」


「あれ以来って東京?」


「…うん」



あの時タクシーの中で言われたけど。
アイツ相当酔ってたしな。



━━♪♪♪



「…またかよ」



スマホの画面にはまた〝桑名〟の文字。



「なんだよさっきから」



俺なため息を付きながら電話に出る。



『会ってくれるまでかけようかなって』



スマホの中から桑名の笑い声が聞こえる。



「お前さ、俺がいくわけないって分かってんだろ」


『でも、そーいう人を捕まえようとするの楽しい』


「楽しくねーだろ。それ。ひねくれてんぞ」


『いいじゃん。これがあたし』


「ふーん。じゃ、今から行ってさいこーのことしてやるよ」



俺はそれだけ言って電話を切る。



行ってやろうじゃねぇか。
本気で諦めさせなきゃって久々に思った。


< 221 / 235 >

この作品をシェア

pagetop