【完】キミにぞっこん
「え?行くの?」



さっきより不安さを増した声で聞く。



「ああ。愛來とな」


「あたしと?」


「うん。行こう」



俺は愛來の手を繋ぎ直して歩く。



「え?」



愛來は戸惑いながらも俺についてくる。



「桑名さんの家知ってるの?」


「前に残業の時送ったから」


「そう…」



横を見ると不安げな顔してる。



「別になんもねーから」



愛來の鼻をつまむ。



「…うん」


「今いったら分かるから」


「え?」



キョトンとした顔になる。



「俺に着いてきて。何も考えず」


「…うん」



戸惑いの声を残したまま俺らは桑名の家まであるく。



「歩いて行ける場所なの?」


「うん。もーすぐ」



俺の瞳はひとつのアパートを捉える。



「…ここ」



俺は愛來の手を引いたまま入口に立つ。



「行こう」



ドアが開いて2人で中に入る。


< 222 / 235 >

この作品をシェア

pagetop