【完】キミにぞっこん
「由月はよ」



聞き覚えのあるような声に
あたしはばっと顔をあげる。



「泰史おはよー」



君塚さんがその人にこたえる。



「新しいこ入ったんだ」



あたしをみてニコッと笑う。



「こいつ同期なのよー」


「…そうなんですか」


「奥さん、子供いるくせに女たらしだから気を付けてね」


「変なこと言うなよ」



そう笑って、エレベーターに向かう。



「…智史くん」



消え入りそうな声でそうつぶやく。



「何か言った?」


「あ、いえ大丈夫です」



あたしの心臓はドキドキしっぱなしだった。



だって、彼は
あたしが失恋した相手のお兄ちゃんだった。


よく似ていて
彼と錯覚しそうになる。



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