【完】キミにぞっこん
「…あの」



あたしは気づいたら声をかけてしまっていたようで。


「…ん?」



彼が不思議そうに返事をしてその事態に気がつく。



「お疲れ様です」



とりあえず平静を装ってそれだけいう。



「…あ」



あたしの顔をみて事態を飲み込んだらしい如月さん。



「休憩?」



すぐにそう聞いてくれる。



「あ、はい。如月さんも?」


「俺はまぁ、事務処理しにきた」



パソコンを指差す。



「あ、邪魔してごめんなさい」



なんだかとて申し訳ない気持ちになってしまった。

たぶんさっきまで
隣にいるあたしの存在にもまるで気づかないぐらいに没頭してたはずなのに。


彼の指先とか、首筋とか。
スーツの着こなし方とか
ネクタイのおしゃれさとか
髪型のかっこよさとか


もうすべてが愛おしくて。

声をかけずにはいられなくて。

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