【完】キミにぞっこん
「あれ、なにも買ってきてないの?」



手ぶらで家に入ってきたあたしに目を丸くする。



「…うん」



それだけしか返事ができない。


だめだ。
ちゃんとしないと。
星那がきにする。



「どうかした?」



星那がタオルで髪の毛を拭きながら歩いてくる。



「ううん」



あたしは星那に抱きつく。



「なんかあっただろ?」



あたしの背中をぽんぽんっとリズムよく叩く。


まるで子供をあやすみたいで。



「その動き、あたし子供だとおもわれてるみたい」



なんて思わず笑っちゃう。



「子供だろ?」



あたしの顔をのぞき込んで


──チュッ



軽く唇が塞がれる。



「子供はこんなことしないもん」



あたしの顔は絶対真っ赤。


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