【完】キミにぞっこん
「帰っていい?」



気がついたらそう放っていた。


これ以上その話をされるのは
あたしには酷すぎて。


星那はなにも悪くないのに。



「は?」



星那は突然のあたしの発言に目が大きく見開かれたまんま。



「帰りたい」


「なん、で?」



星那の目が不安の色になる。



「帰りたくなったの」


「だから、なんでって」



あたしの腕を掴む。



「嫌!」



星那の手を払い除ける。



「…愛來」



ショックそうに振り払われた手を見つめる。



「…ごめん」



星那はなにも悪くないのに謝る。



「何に謝ってんの?」



あたしは黒い心しかなくなっていた。


前のあたしに戻っていた。
智志くんと別れたばかりのあたしに。


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