【完】プライドなんか知らない
なんで、こうなってしまうのか。
別に偉そうにしたいわけじゃない。
ただ、自分に素直にいきているだけ。
だから。
「新條さんが好きです!」
「ムリ」
「俺と付き合って!」
「ムリ」
「デートしようよ」
「……絶対ムリ!!」
あぁ。
段々イライラしてきた。
なんでこんなに面倒くさいんだろう?
あたしは、『誰かのもの』になんかなりたくないよ。
ちゃんと等身大の『新條朱莉』のままでいたいだけだよ。
それなのに…。
『新條落とせたら、鼻高いよなー』
って、そう言うお前は何様だっつーの!
そんなこんなで告白されるとやる気が全部無くなる。
でも呼ばれると、反射的に出向いてしまう。
あぁ…あたし、何がしたいんだろう?
「しんじょー?なんか凄いムクれてるけど?」
「どうしたの?」と、あやちゃんがあたしの髪を一房取って、弄ぶ。
別に直にどこかを触られた訳でもないのに、くすぐったい。
「なに、してんの?」
「ん?マーキング、かな?」
「はい?」
「気にしなくていいんだよ、しんじょーは」
「……」
時々あやちゃんは意味あり気なことを言う。
なんなんだろう?
それを聞いてあたしは…。
安心感?
安堵感?
いや、安定感なのかな?
それを覚える。
「あやちゃんて、不思議…」
「そう?しんじょーは、かわいいよ」
「……へ?」
「かわいい」
…ほんとに、あやちゃんが分かんない。
なんで、今そんなことを言うのかな。
それって、あやちゃんの本音なの?
「しんじょー?」
「おだてても何も出ないんだかんね!」
「…はいはい」
なんとなくムッとして、あやちゃんをニラんでみるけど、それは全然あやちゃんには通じ無くて。
あやちゃんはくすくす笑いながら、薄っぺらなカバンを肩に掛けた。
「しんじょー、帰るよ?」
「あ、待ってよ!」