【完】プライドなんか知らない
別にスルーしても良かったんだけど。
新條がイライラするとオレもものすごくイライラするんだ。
「あーあ。もう、ほんと、やんなっちゃうねぇ」
ガシガシと頭を掻いてそいつを見ると今にも悲鳴を上げそうな引き攣った顔をしていた。
「まだいたの?早く行かないとケガするかもよ?」
「…っ!」
情けない声を上げて、そいつはオレの前から逃げてゆく。
残されたオレは、結局手を付けられず用のなくなったメロンパンとオレンジジュースを、勿体無いけどゴミ箱へと入れ深い溜息を吐いた。
なーんか新條と一緒にいないと溜息ばかり。
これじゃあ、ほんとに幸せが逃げちゃうよ。
物憂げさに加え、連日の不眠のせいでやる気が全く起きない。
オレは仕方がないから、午後一の授業をサボってこの時間誰も使用してないはずの音楽準備室へ足を運んだ。
ココ、ほんとに落ち着くんだよね…。
それを教えてくれたのは、他の誰でもない新條なんだけど。
オレと一緒に居たくなくなったのかと思えば、さっきみたいにいつも感じる、新條の迫ってくるような視線。
さて。
どうしようか。
下手に迫って嫌われるくらいなら、このままの距離でいた方がいい?
けどさ。
「やっぱり傍に居ないとダメなんだよね…」
そう呟くと同時に、オレは誰もいない準備室で生あくびをした。
そういや、人間の三大欲って、一つでも満たされないとダメなんだっけ?
なんか、そんなの聞いたようなないような。
…どっちでもいっか。
まぁ、だったら、今のオレ。
かなり、ボロボロ。
新條、つれないお前も好きだけど。
オレ、今かなり。
お前に飢えてます。