【完】プライドなんか知らない


「はぁー…なんだかなー…」


売店へ一人。

新條の好きなメロンパンを買いに出る。

盛大な溜息が漏れて、お陰で売店のおばちゃんに、


「疲れてんなら、コレもあげるよ!」


なんて、キャンディーのおまけを貰う始末。



オレ、そんなに疲れた顔してる?

確かに不眠は相変わらずだし、あんまり食欲もないけれど。

新條が戻ってきてくれただけでもいいと思わないとね。



「しーんじょ。お待たせ」

「遅い!あやちゃんが遅いから、ヘンな奴に声掛けられるし、気持ち悪いし…」


心底気分が悪いと言うように身震いをする新條に、オレは苦笑いをして、メロンパンとキャンディーを差し出した。



「ほい。糖分摂って落ち着きなよ。ね?」

「うん。ごめん、あやちゃん。なんかグチった…」

「いいよ。それくらい。どうってことないからさ」

「やっぱりあやちゃんは、心が広いね」


そう言って笑う新條。


そんなことない。

そんなことないんだよ?


心の中じゃ、新條のこと…何万回って掻き口説いてる。

オレ、そんなに器の大きい男じゃないんだ。


だけど…。


「えへへ。あやちゃんってば、いい人~」


なんて、言われると。

ついついそんな自分を封印して、新條の言う通りのオレを演じちゃうんだ。


余裕?


ムリムリ。


今のオレには余裕の「よ」の字もありません。



新條の心地良いと思える場所を確保するので、いっぱいいっぱい…なんです。





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