【完】プライドなんか知らない
プライドなんか知らない Side:綾人
新條が、なんとなくオレを意識し始めてくれたのは、ここの所の様子で分かった。
でも、本人は気まずそうに、ひたすらそのことを隠そうとする。
なんで、そこで頑なになっちゃうかな?
やっぱりそこは「女王様」気質だから、なのかな…?
「しんじょー。ノート貸して?」
「…いいよ。はい……っ!」
つつっと偶然に触れた指先に、過敏に反応してくれる新條がかわいくて仕方がない。
くすくすと笑うと、ムッとしたように「なに?」と返ってくるけどその顔が真っ赤に染まっていて、更に笑みが零れてしまう。
なんか、もう…ほんとにお手上げ。
オレは、お前が好きだよ。
ためらわずに、そう言えるよ。
だから…。
「ねぇ、しんじょー?」
「…なーに?」
「オレと付き合って?」
「…っ?!」
プライドなんか、なんのイミも持たないよ。
だって、目の前にいる人が凄く好きなんだから。
「は?な、な、な?」
「はな?」
「ちがう!なんで?!」
「好きだから?」
「誰が、誰を?!」
「オレが、しんじょーを」
「~~~?!」
「分かった?」
「…ん。…いやいやいやいや、なんでよ?!」
「んー?」
「あやちゃん、好きな子いるんじゃないの?」
「いや、それがしんじょーだから」
「ばか…」
ふいっと、顔を背けられ、やっぱり自分の勘違いだったかな?と。
これで、全部終っちゃうのかな、と思った…その矢先。
「あやちゃんは、ずるい」
「…どうして?」
「いっつも。あたしのことからかうくせに、優しいし。かと思えばよく分かんない所でイライラしてるし」
「んー…それはね、しんじょーが、他の男と話してるから。ヤキモチだよ、分かる?」
「あたしのこと振り回してかき乱して、それなのに平気な顔してて」
「それは、お互い様じゃない?」
「…じゃあ、あたしのこの気持ちはなんなの?!」
「自分じゃ分からないなら、オレが教えてあげるよ?」
泣き顔がかわいくて、ついついいじめたくなっちゃうけど、ここで嫌われたら元も子もないから。
ぎゅう。
音がするくらい強く強く抱きしめて。
「変なプライドなんか、いらない。しんじょーが好き、だよ?」
「…っ。あたしも…」
「も…?」
「あやちゃんが、好き…」
やっと手に入れた、幸せ。
ほんと完全にオレの負け。
想いが通じ合っても、多分、キミには到底敵わないから…。
「ねぇ?降参するから、ずっと傍にいてね?」
抱きしめて、囁いた。
このまま、オレの手を離さないように…。
Fin.