気まぐれな君は
気まぐれな君と初対面
***
桜の花びら散る頃、というのは、もう当てはまらないのではないかと思う。
もう少ししか残っておらず、ピンクの花弁が若緑色の葉っぱに変わっているのを見ながら、私は昇降口の前に立った。
「雫何組ー?」
「えー……っと、あったあった。私E組、若葉は?」
「あたしも! よかったー、知り合いと一緒で!」
知り合いってちょっと失礼じゃないか、と思いながら、私は若葉と二人教室を探して学校へ入る。文化祭と学校説明会、受験票の提出、受験当日、合格発表と入学説明会、そして今日で七回目となる高校。これから三年間、私が通うことになる学校だ。
四月九日。天気は晴れ。今日は高校の入学式。
四階にある一年E組の教室に辿り着いたときには、もう大分席は埋まっていた。
空いている席と、自分の名前から大体の席を割り出して机の右端に貼られている名前シールを確認していく。若葉と小さく手を振って別れると、私は窓から三列目の一番前の席の椅子を引いた。
右隣の席は、まだ来ていないらしい。左隣は荷物は置いてあるものの人はいなかった。もう何人かでグループになっていたりするから、どこかに言ってるのだろう。
時間まではあと十分。来てないの、大丈夫かなと思いながら必要書類を一応確認。両隣もいないし、一番前の席だし。一番前は嫌だなあ、と思っていると、担任らしき先生が教室に入ってきた。
「皆さん自分の席に座ってください。……まだ何人か来てないのか。もう知ってるとは思うけど、担任の中原です。詳しい話はまた全員揃ったらね」
話をしている間にも後ろのドアが開く音がしたから、何人かこそこそ入ってきているんだと思う。電車の時間が微妙だったのかな。迷う場所ではないから。
先生が入ってきたことで静かになった教室に、きっかけである本人が苦笑する。喋ってていいよ、と先生が言うと、少しずつざわめきが戻ってきた。いい先生、っぽい。話しやすそうな女の先生でよかった。
安心していると、視界の端に映る前の扉が、がらっと開けられる音がした。
「おはよーございますっ」
教室中が静まり返る。入ってきた少年が、きょとん、とした表情を作った。
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