気まぐれな君は
「あいつまだ掃除だよ。俺はやるなって追い出されてきた」
「どこだっけ?」
「教室」
嗚呼、と思わず納得してしまった。真白くんに机なんて運ばせられないし、そもそも埃とか気にしてしまう。
「俺も掃除くらいできるのにー」
「埃アレルギーが何を言う」
「うっ」
「先週何があったか忘れたとは言わせません」
「……スミマセンデシタ」
片言で謝った真白くんに笑いながら、空いている机に荷物を置いて真白くんの隣に座った。
今日は先週よりは調子がよさそうだ。別にいいとは言っていない。元々肌が白いせいか、具合が悪いとすぐにわかるけど。微妙だなあ、と思いながらちゃんと見ておくことを心の中で決める。
「で、猫なんだけどね」
空気を変えるように話を始めると、うん、と乗ってきた真白くんが身を乗り出した。持ってきていたパソコンを弄って、お兄ちゃんが管理しているホームページを立ち上げる。真白くんのことはお母さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんにも話をしてあった。柳くんも真白くんに付き合って手伝ってくれている。
目下の課題は、ホームページの知名度の拡大。それから、ポスターを貼ってくれるお店や動物病院などを増やすことの二点。
後者の方は、高校近くのコンビニや個人商店、動物病院やコインランドリーなどを回って少しずつ増やして行っている。難しいのは前者だ。閲覧者数はなかなか増えない。
「今日増えたのが、さっき仮としてお母さんから写真貰ったんだけど、これ。体調は大丈夫そうだって言ってた。オスとメスだって。今日明日でベストショット狙っておく」
「生後一ヶ月くらい? そんなにしないか」
「お母さん曰く二週間か三週間か、だって。いつから捨てられてたのか分からないけど、昨日の夜は冷えたから」
「……だね。ベストショットは頼んだ。こっちはやっぱり進展なし、っていう残念報告ー。でも、冬馬が昔入ってたサッカーチームに声かけてくれるって言ってたよ」
「マジ!? なにそれありがたいー! 柳くんありがとう!」
「どういたしまして?」
急に後ろからした声に驚いて振り向くと、教室の入り口に立つ柳くんを認めた。いつから。いや荷物持ったままだし今か。
真白くんの荷物を寄せて隣に自分の荷物を置いた柳くんが、真白くんの隣に座る。立ち上げたホームページを覗き込む柳くんに場所を明け渡して、私は身を引いた。
「多分、サッカーチームの話してたんじゃねえかと思うんだけど」