気まぐれな君は
ただ更に謎なのは、私にはその態度の変化がないことだ。柳くんにもないけど、二人の付き合いは長いし。やっぱり真白くんの基準はよく分からない。
と。
「都築さん」
話がまとまったのか、意味もなく開きっ放しだったパソコンの画面をスクロールして眺めていた私に、真白くんと柳くんが向き直った。
画面を閉じて、こてんと首を傾げる。そういえば、今日はまだ私たち三人しか部員がいないな、と今更気付いた。先輩たちも同輩も、まだ来ていない。
「まだ知り合って一ヶ月ちょいだし、こんな重い話するのもどうかと思うんだけど」
重い、話。それってもしかして、病気のこと、だろうか。
「多分、俺の次に真白を見てんのって都築さんなんだよな。中学の奴らもみてはいるけど、あいつらがいるときは多分俺もいるし。だから都築さんに知っといて欲しいと思った」
「ただ、あくまで俺と冬馬の一方的な考えだし、押し付けになっちゃうし。都築さんが嫌なら忘れてくれていいんだけど、それでも話していいかな」
多分きっと、そうだ。
迷う間もなく、私は頷いた。話をしてくれるなら、私はそれを聞くと決めていたから。
正直、知らないことはちょっと怖かった。
先週の真白くんを見ていて、思ったのだ。知らないって怖いって。知らないということは、何もできないんだって。何もできないことが、重大なことに繋がるんだって。私は、この目で見て、体感してしまったから。
立ち上がりざま、さあっと顔色を悪くして倒れそうになった真白くんと。それをすんでのところで支えて、座らせて面倒を見ていた柳くんと。その場に立ち尽くしたまま、何もできずに見ていることしかできなかった、私と。
見ているだけは、嫌だ。私のできることがあれば、したい。
でもそれは私個人の勝手な願いに過ぎなくて。だから私は真白くんが言ってくれるのを、勝手に待っていた。
先週真白くんが倒れたのも、放課後の部活での話だ。あの時も部員は私たちしかいなくて、だから話は広まらずに済んだ。それだけがきっと、唯一の救いなのかもしれない。
「私にできることがあれば、教えて欲しいの」
真白くんを、知りたい。力になりたい。
私の力になってくれた二人に、何か返せることがあれば。
たかが高校生でできることが限られているのは分かっているけれど、私にできることだってきっとあるはずだ。