気まぐれな君は
「おい矛盾してんぞ」
「分かってるよ。だって冬馬だって思うでしょ」
そりゃまあそうだけど、と濁した柳くんが白くんの背中を優しく撫でる。ぴくり、と耳を立てた白くんが、すぐにくたっと耳を倒した。
その様子を見ながら私がこてんと首を傾げると、苦笑した柳くんが口を開いた。
「都築さんって、すごいよな、ほんと」
「へ?」
「普通こんなすぐ受け入れて、受け止めてくれる人なんていないだろ? なのに都築さん、全く疑わないし、真っ直ぐだし。ほんとすげぇよ」
「えっだってほんとのことでしょ? どこに疑う要素が……まさか先週のあれから演技だったとか!? なわけないでしょ!」
「そっちにいくかっ」
私の言葉の間から笑っていた柳くんだったけど、最後に突っ込むなりげらげらと笑い始めた。真白くんも俯いて肩を震わせている、笑っているのが丸わかりだ。
とてもあんな病気を背負っているとは思えないんだよなあ、と思う。それも、二人が苦しんで乗り越えてきた証なのだろうけれど、それでも。
まあ笑っていられるならいいのか、と納得して、私は手元のプリントをファイルに挟んでバッグに仕舞う。暫く笑い続ける二人に呆れて声を掛けると、げほげほと咳をする真白くんの背中を柳くんがゆっくりさすっていた。
「あんまり笑うからだぞちゃんと息しろ」
「だ、ってっ……! はあー、笑った笑った」
「……真白くん、顔色よくないよ」
笑ったせいだよ、という真白くんの声と、にゃあ、と鳴いた白くんの声が被ったせいでまたツボりかけた真白くんが必死で深呼吸をしていた。
お前も真白だもんね、と口にしながら、その艶やかな毛並みをひと撫で。嫌がらずに素直に受け入れてくれる白くんは、さっきの警戒はひとまずどこかに置いたらしい。
ひやひやしながら息を整える真白くんを見守って、落ち着いた真白くんが立ち上がろうとしたのを制した。多分、過度にダメっていうのはよくないんだろうけど、今は私の気持ちもちょっとは考えて欲しい。
「私、帰るね。わかんなかったら連絡していい?」
「うん。あ、グループ組んでおこうか、俺たち三人の」
「それいいかもな。後で追加しておくから、参加しといてくれ」