気まぐれな君は
気まぐれな君と夏祭り


***


八月のお盆前、旧暦で言う七夕の季節である。


真白くんの病気を知ってから、特にそういった緊急事態に陥ることもなく、何とか子猫たちも里親が見つかってひと段落した夏休み。課題はさくっと終わらせ、あとは遊ぶだけとなった夏休み中盤、私は真白くんに誘われて真白くんの家の近くでやっている夏祭りに来ていた。


いつもの六人に声を掛けたのだが、茉莉は部活、絵里は実家に帰省中。残った私と真白くん、柳くんと若葉の四人で集まることになり、折角だからと浴衣を着ていくことになっていた。


若葉のお母さんが着付けができると聞いて、浴衣と帯だけ準備して着付けをしてもらい、電車に乗り込んだのは五時過ぎ。お祭り自体はもう始まっているらしいが、メインは夜だからと少し遅めの集合になっている。


本当はもう少し早く着いているつもりだったんだけれど、若葉のお姉さんにヘアアレンジをしてもらっていたため予想していた時間より少し遅くなった。


五時過ぎとはいえ、まだ蒸し暑い。真白くんの体調がいいといいのだが、今日はどうだろう。寒いよりはいいから毎年夏祭りには行くんだ、と楽しそうに話していた姿を思い出して、私は思わず頬を緩めた。


「雫、楽しそうだね」

「え? そうかな」

「うん。にしても雫は和装似合うなー! お正月も着物着ようよ。お母さんが喜ぶ」

「若葉じゃなくて私なのね」

「あたしは着物似合わないもーん」


ぷう、と頬を膨らませた若葉の顔を両掌で押し潰す。ぶはっと空気を吐き出した若葉が、やっぱり楽しそうだよ、と終わったかと思われた話題を引っ張ってきた。


「なになに? 白川くんと逢えるから?」

「え? 違うよー」

「雫、にやけてるよ」

「えっ」

「うっそー」


もう、と腕を叩くと、手に握りしめたスマホに連絡が来ていないか確認する。夏休みに入ってから会ってはいないから、大体二週間ぶりになる。体調を崩した、とは聞かないけれど、真白くんのことだから隠しているかもしれない。


柳くんから改札前で待ってる、という連絡を貰い、了解と返事を送っておく。画面を若葉に見せると、親指と人差し指でオーケーサインを作った。


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