気まぐれな君は


そんなにまめじゃない私は、真白くんとほとんど連絡を取っていない。今日のお祭りに誘われたことについて、六人でのグループで話をしたくらいだ。それに顔が見えないのはあまり好きじゃないから、こうして会えるのはちょっと楽しみだった。


一度だけ降りた駅の改札を、今度は若葉と二人で通る。お祭りのせいで込み合った駅の中で、真白くんと柳くんが二人並んで立っているのが見えた。


「お待たせ!」

「ごめん、待ったよね」


履き慣れない下駄をからんころんと鳴らしながら二人に駆け寄る。きょとん、とした顔をした真白くんの顔の前でひらひらと手を振った。どうしたの、真白くん。


「一瞬誰かと思った」

「私だよ都築さんだよ、忘れないで真白くん」

「都築さん綺麗だね」

「そんなことないよ、でもありがとう」

「そういえば久し振りだったね! にゃんこ元気?」

「うん、真白くんは? 今日は?」

「多分大丈夫」


真白くんの多分は信用ならない。


隣の柳くんに視線を送ると、理解したように一つ頷いてくれた。一応柳くんの許可は下りているわけか。じゃあ大丈夫かもしれないけれど、ちょっと気にしておこう。


会うなり流れるように会話を始めた私と真白くんに、若葉は呆れたような顔をしていて。なんかこう、もう少しなんかないのかねえとぶつぶつ呟いていた。


「じゃあ行こうか」

「結構歩くの?」

「いや、割と近いよ。十分くらいかな?」

「十五分だろ。俺たちだけじゃねえんだから」


私と真白くん、その後ろに若葉と柳くんが続いて、駅を出た。


人で混みあっている道には、同じように浴衣を着た人やりんご飴、綿あめを持った子供たち、手を繋ぐカップルなどがちらほら見える。りんご飴とか暫く食べてないなあ、と思いながら隣の真白くんの顔を見上げた。


あんまりにもさらっというから私もさらっと否定したけれど、この人さっき綺麗って言わなかったか。そんなにさらっと言えるものなのか、普通。本心なのかお世辞なのかよく分からない。


「そういえば、二人とも何時くらいまでは許容範囲?」

「あ、えっとね、まあ八時とかかなあ」

「あたしもそれくらいー」

「七時から花火上がるんだ。三十分くらいで終わると思うから、一緒に見ていかない?」


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