気まぐれな君は
えっ見たい、と先に身を乗り出したのは若葉だ。私も、と遅れながら頷くと、じゃあそれまではぶらぶらしてよう、ということに決まった。
「何か気になるものあったら言ってね」
「りょうかーい! とりあえず眺めながら進んで、食べたいものとかあったら買って、戻ってくる形にする?」
「そうだな、それが一番効率的」
「あたし手始めにチョコバナナ買っていい?」
「あっ俺も」
自由か、と思いながら、チョコバナナを買いに行く真白くんと若葉を追いかけた。柳くんと二人、苦笑する。じゃんけんをしている二人を待っている間、ちょっと悩んだ末に私は柳くんに声を掛けた。
「夏休み、真白くん、体調は?」
「あー……まあ、あいつに聞いてもちゃんと答えないだろうしな。概ね元気、だったけど先週末からちょっとなーって感じ。今日は元気そうだったから両親と俺のチェックも通過したけど、あいつ訳分からんとこで隠すからよく見ててやって」
「らじゃ」
「頼もしいな、都築さん」
じゃんけんの結果、どうやら真白くんは買って、若葉はあいこだったようである。
二本のチョコバナナを得意げに持ってきた真白くんが、さも当然のようにはいと私に一本差し出してきた。きょとん、と目の前に差し出されたチョコバナナを前に動きを止めてしまう。と、差し出すというより突き出してきたチョコバナナを反射的にもらってしまった私に、若葉がいいなあと声を上げた。
「役得だね雫」
「いや何が? って、待って真白くん半分払うよ」
「いーのー。寧ろ俺からの前払い」
それは、一体、どういう意味だ。
私の手に渡ったチョコバナナには興味をなくしたのか、真白くんは自分の手に持ったチョコバナナを食べ始める。歩きながらも危険か、と思って迷った末に私もチョコバナナを食べてしまうことにした。
真白くんからの前払い。それって、病気関連のことだろうか。いやそれ以外に思いつかないのだけれど、……今日ってこと? それとも今後ってこと?
柳くんに視線を向けると、少し険しい顔をして真白くんを見ている。気付いているのかいないのか、真白くんは満足そうな表情でチョコバナナを頬張っていた。
よく分からないが、真白くんからあまり目を離さない方がいいかもしれない。