気まぐれな君は
それは半ば直感に過ぎなかったけれど、柳くんだってあんな顔をしていた。それに、先週末からあまりよくないということもあるらしい。何事もないに越したことはないが、警戒しておいて損はないだろう。
こうなると、浴衣は動きにくいな、と思ってしまった。真白くんの体調は気にしていたけれど、それがどんなことに繋がるのかまでちゃんと考えられていなかった。
まだまだだ、と思うが、今はそれを悔やんでる場合でもない。残った割り箸のごみを近くにあったゴミ箱に放り入れて、さりげなく柳くんと視線を合わせる。先を行く真白くんと若葉を柳くんと二人追いかけながら、話すのは真白くんのこと。
「……さっきの、どういう意味だろう」
「この先、ってだけならいいんだけど……何か嫌な予感すんだよなあ」
「柳くんがそれ言わないでよ……花火まで、大丈夫かな」
「ダメそうだったら強制的に連れて帰る。そん時は宮坂さんのフォロー頼む」
「分かってる。真白くんはお願いね」
「おう」
二人ともー、と前から名前を呼ばれて会話は中断。柳くんが嫌な予感、というなら余計に気になる。
頭の中で教えてもらったことを反芻しながら、元の並びに戻って私は真白くんと隣同士に歩く。あっちこっちに興味を示す真白くんがどこかに行かないように気を付けながら、私は真白くんに話題を振った。
「夏休み、どう? 宿題とか」
「都築さんそれ訊くの? 真面目ー」
「ちゃんとやってるかなあって思って。私は終わったからね!」
「えっすごっ。俺まだ半分だよ」
「は、都築さん宿題終わったのかよ!?」
後ろから動揺した声が聞こえてきた。言わずもがな柳くんである。
雫は終わらせるのいつも早いよね、という若葉に頷いて、まだ終わっていないという男子二人組にどや顔をしてやった。宿題は早く終わらせておくに限る。
「何が終わってないの?」
「んーと、数学と化学。他は終わったんだけどなあ」
「真白くんもしかして文系か」
「そうだよ、あっ金魚すくい」
あとでやろうよ、と声を掛けて、とりあえず前に進んでいく。はあいと声を上げた真白くんはちょっと拗ねているように見えた。かわいい。
話をしながら、くるくる変わる表情を眺める。確かに、体調が心配という大義名分もあるけれど、それ以上に見ていて面白いなあと思った。