気まぐれな君は


「都築さん!」

「……どうしたの、真白くん」

「あのね!」

「あ、白川くん、ちょっと後で職員室寄ってもらってもいいかな? ご両親一緒だと嬉しいんだけど」

「あ、はい!」


と、先生のせいで話が中断。何だろう、と思いながら、私は真白くんの様子を窺って、彼の言葉を待った。


教室はまだざわめいていて、そこかしこで連絡先の交換が行われている。これから一年間一緒にいるクラスメイトと早い段階から仲良くなっておくに越したことはない。


私も誰か女子に声かけたいなあ、と思っていると、真白くんが私の顔を覗き込んできた。


「都築さん?」

「わあっ!?」

「ごめん!?」


近くてびっくりした。真白くん、距離が近い。


私の大声にびっくりしたのか、つられて声が大きくなった真白くんに教室がしんと静まり返った。どきどきする心臓を服の上から抑えていると、真白くんも同じことをしている。真白、と近くにいた男子がその肩をとんとんと叩いて、あほか、と容赦なく罵倒した。


「酷いよ冬馬!」

「酷くねえよ、おめえはもっと自分を知れ」

「……はぁい」


ふてくされたように言う真白くんに、一人首を傾げた。冬馬、と呼ばれた友達は中学から一緒なのだろうか。


仲良いなあ、と思いながら、進まない会話を思いつつ口を挟んでいいのか悩んで。ふう、と落ち着いた呼吸で吐息を吐くと、私は真白くん、とその名を口にした。


「それで、どうしたの?」

「あ、うん! あのね、LINEやってる?」


一瞬きょとん、とした私は、多分間違っていないと思う。


まさか高校に入って一番最初に連絡先を交換するのが男子になるとは思っていなかったので、反応が遅れたのは許してほしかった。


あれ? と首を傾げた真白くんに慌てていいよと返事をして、スマホを取り出す。すぐに嬉しそうな顔をした真白くんと、呆れ顔でその隣に立つ冬馬くん。二人とも冬みたいな名前だなあと思ってから真白があだ名だったことに気付いて、ふと我に返った。


そういえば、冬馬くんって朝真白くんが教室に入ってきたときに騒いでた子か。そういえば、声が似ているような。


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