気まぐれな君は


「ありがと、真白くん」

「こっちこそありがとう。そっちは女子たちの分?」

「そう。若葉だけないと拗ねるし、となると二人の分も買わないと」

「女子ってお揃い好きだよね」

「最初に共犯だって言って選び始めたのは真白くんだからね?」


てへ、と笑った真白くんにつられて思わず笑ってしまった。


そこに、買い物を終えたのか若葉が突撃してきて、ぐえっと酷い声を出してしまった。吹き出した真白くんと、腹を抱えて笑い出した柳くんは許さない。勿論元凶の若葉もだ。


「もう若葉にあげないから。若葉だけ仲間外れだから」

「えっなにがなにが」

「折角ミサンガ女子組でお揃いで買ったのになー」

「えっごめんって悪かった! 私が悪かった!」


雫ー! と情けない声を上げる若葉に、男子二人が笑う。それに免じて許そう、とあっさりミサンガを渡した私に、若葉がはしゃぎ声を上げた。忙しい子。


「ってかあたし二人分だそうか?」

「それはありがたいね。あとででいいよ。邪魔になっちゃうし」

「あーい、忘れてそうだから言ってね」


了解、と返して、くつくつとまだ笑っていた真白くんの背中を叩いた。ちょっと先に見えた金魚すくいのお店を指さすと、目を輝かせて先に行こうとする。それを服を掴んで止めて、迷子になるでしょと叱るとしゅんとした真白くんの頭を撫でた。


「金魚は逃げないから、ね?」

「はーい……」

「というか、白川くんちって金魚飼えるの?」

「嗚呼、こいつキャッチ&リリースだよ、いつも」


行こう、と私の腕を引く真白くんに負けて、私は金魚の水槽の前に立った。遅れてついてきた柳くんが若葉に答えているのが聞こえる。真白くんは気にした様子もなく、お金を払って店番のおじさんにポイを貰うと真剣な表情で金魚と向き合った。


なんか、猫みたいだな。獲物を狙う猫。嗚呼、だから気まぐれなのか。


くだらないことを考えていると、次々金魚を掬っていく真白くんに驚いた。金魚ってこんなに簡単に救えるものだっただろうか、いや違ったはずだ。店番のおじさんも驚きを通り越して感心した声を出している。


「えっ、白川くん凄くない?」

「真白、昔から金魚すくいだけは得意なんだよな……」

「だけってなんだよだけって、あっ破れちゃった」

「で、記録は?」


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