気まぐれな君は
「んー……二ケタ行かなかったな、八?」
「それってすごいよね?」
何少ないなあみたいな顔してるのかな真白くん。
おじさんに凄いを連呼されながら、お椀に掬った金魚たちを水槽へと放した真白くんが、気が済んだのか立ち上がった。
「いいの?」
「うん。次どうするー?」
「あ、私焼きそば食べたい」
「あたし豚たま」
「俺も豚たま」
「俺は焼きそばかな」
私と真白くんが焼きそば、若葉と柳くんが豚たま。
二手に分かれて目当てのものを買い、時間を確認すると案外時間は経っていたようで、花火が始まる七時まであと三十分となっていた。
食べる場所を求めるついでに花火を見る場所を探し、話し合った結果少し離れた神社へ向かうことが決定する。そこが一番よく見えるんだ、と言った真白くんは得意げで、毎年柳くんとそこで見ているのだと言った。
「……真白くん、焼きそば平気なの?」
「あ、うん。たまには、ね」
「そっか。……体調は?」
「大丈夫だよ」
もう辺りは暗くなってきている。そうなると、真白くんの顔色がうかがえない。
今のところ、変なそぶりはなさそうだけれど、やっぱりどこか不安だった。きゅっと唇を引き結んで、吐き慣れない下駄を引きずって歩く。真白くんは私と若葉が着いてくるのを待っていてくれて、逸れることはなかった。さっきは先に行こうとしたくせに、こういう時は待っている。何となく卑怯だと感じながら、先を行く真白くんを追いかけた。
街灯のない少し寂れた神社は、どうやら穴場らしい。一本通りを奥へ行っただけで、こんなにも人が少なくなるものかと驚く。ベストポジションと思われる場所を確保した私たちは先に買ったものを食べてしまうと、四人で話しながら花火を待つことにした。
四人揃うと始まるのは猫の話で、貰われていった猫たちの里親さんからどんな報告があったとか、ホームページのこととか、そういった方に話が行く。私は家で飼っている子たちの話だったり、貰われていった子たちの話をしながら、真白くんの様子を観察していた。多分、柳くんもそうだったと思う。唯一何も知らない若葉が純粋に花火を楽しみにしていて、若葉がいてくれてよかったと心底感じた。
「花火とか何年振りだろうなあ」