気まぐれな君は


「都築さんありがとう! 冬馬、帰ろ」

「あ、うん、気を付けてね」

「はあ……都築さん、悪い、こいつめちゃくちゃマイペースだから。また明日な」

「うん! また明日!」


なんだ、それだけ、なのか。って、あれ、真白くん職員室に呼ばれてなかったっけ。


ふと思い出して、教室から出ていきそうな真白くんを捕まえる。真白くん、と名前を叫ぶと、びっくりして振り返った真白くんが少し眉を寄せるのが分かった。


反射的にごめん、と謝って、二人に近づくと私は真白くんに「職員室は?」と問いかけた。


「あ」

「真白お前忘れてたのか」

「えーめんどくさい……冬馬いっといてよ」

「意味分かんねえよ、ほれ行くぞ」

「はーい」


真白くんを引っ張っていく冬馬くんを今度こそ見送ると、自分の席に戻った。親御さん来てないのかなあ、と思いながら荷物を詰める。


でも、どうして呼ばれたんだろう。しかもご両親も一緒とか。何かあるのかな。冬馬くんは知ってるんだろうか。


まあ考えても仕方ないか。だってまだ今日が初対面なわけだし。


自分を納得させていると、教室の後ろの方から若葉の声がかかった。ん、と振り向くと、数人の女子と一緒にいる。そういえば真白くんに気を取られ過ぎて女子と話していなかったな、と思い出し、慌てて若葉の机に近づいた。


「若葉ごめん、ありがと!」

「いいっていいって。何か隣の子とずっと話してたし。……で」


見てたのか、そりゃ見てるよな、叫んだもの。


若葉に感謝しつつ、一緒にいた女の子二人に視線を送る。都築雫です、と名乗ると、知ってる、とショートカットの女の子がにっと笑った。


「若葉に聞いたよ、中学一緒だって。あたし工藤茉莉! 茉莉って呼んで!」

「私は御崎絵里。絵里でいいよ」

「茉莉に絵里、ね。私も、雫って呼んで!」


元気っ子って感じの茉莉と、大人しそうな感じの絵里。でもまあ仲良くやっていけそうだ。流石若葉。


「雫は部活は?」

「私? うーん、悩んでる。茉莉と絵里は?」

「さっき話してたけど、あたしは陸上! 絵里は書道だってー」

「あー茉莉イメージ通りだわ。絵里、書道習ってたりするの?」


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