気まぐれな君は
その聞こえる声、を頼りになのか、真白くんは辺りを探るようにゆっくりと歩く。それを止めるのもはばかられて、私と柳くんは静かに真白くんの後をついていった。
暫く慎重に辺りを探っていた真白くんはまたもや途中で足を止めて、私たちが止める間もなく歩道脇にあった茂みをがさごそと漁る。おい、と思わず声を上げた柳くんが、真白くんの探し当てたものを見つけてひくっと息を呑むのが分かった。
「……捨て猫」
「大分衰弱してる。病院に連れて行かないと……よしよし、おまえよく頑張ったな」
「私、お母さんに連絡して来てもらう。二人はタオルか何かあったら包んであげて、保温して。その子だけ?」
ぽつりと言葉を落としたきり固まってしまった柳くんが、私の指示にはっとしてリュックを漁り始めた。茂みから真白くんが拾い上げたのは一匹、お母さんに電話を掛けながら私は真白くんに確認を取る。ゆっくりと首を左右に振った真白くんに、他にもいたが助からなかったことを悟った私は、電話に出たお母さんに簡単に事情を伝えて迎えに来てもらうように頼んだ。
真白くんから猫を一度受け取って、怪我がないかを確認する。みゅうみゅうと鳴く子猫の声は細い、間一髪のところで見つけられてよかったと、助からなかった他の子を悔やみながらも思った。
柳くんの持っていたタオルで湿った身体を拭い、自分の持っていたものと真白くんのタオルで子猫の身体をそっと包む。ぷるぷると身体を震わせる子猫を、タオルごと優しく抱き上げた真白くんが自分の体温を分けるように胸元に入れた。バッグの中にカイロを入れてあったことに気付いて、私は探し出すと封を切る。真白くんに手渡すと、子猫に直接触れないように気を付けながら子猫を温め始めた。
それを見て、私は茂みを漁ると他の子を確認する。潰れかけた段ボールに、くたっと横たわる影が三つ。四兄弟の生き残りだったらしい子猫がこの三つの影の仲間に加わることがないように祈りながら、私は段ボールを茂みから出した。
お母さんには、助からなかった子がいることも伝えてある。保護することが多い分、こういうことだって決して少なくはない。お母さんからそれを教えられている私は、この子たちもお母さんが連れて帰ることを知っていた。
「柳くん」
「おう」
「タオル、貰っちゃってもいいかな。あとで新しいのあげるから」
「構わねえよ、つか別にいらねえ。使ってやってくれ」