気まぐれな君は
「雫!」
「あ、お母さん!」
「嗚呼、そっちの子ね。確か真白くんだったっけ、君は車に乗って。どうせだから柳くんも一緒に。雫、他の子は?」
「この子。ビニールシート敷いてある?」
「あるから後ろに乗せてやって。ほら二人とも、早く乗る!」
えっはい、と戸惑う二人を後ろに乗せて、私は段ボールを後ろの広いスペースに乗せると自分は助手席に乗り込んだ。
お母さんが車を発進させると、私は後ろの二人を覗き込む。困惑顔の真白くんと柳くんに、とりあえずごめん、と謝った。
「お母さん強引で。二人のことはあとでちゃんと送るから。お母さんが」
「いや都築さんも十分強引だったと思うんだけど、」
「そうだよ雫、アンタも二人のこと車に押し込んだんだから同罪」
「とりあえずお母さんは黙って道間違えないようにしてて」
「はい了解」
さくっとお母さんを黙らせ、会話再開。を、しようと思ったら二人が後ろで笑っていたのでできなくなってしまった。解せない。
「都築さんのお母さんって面白い人だね」
「流石都築さんのお母さんって感じだな」
「二人ともどういう意味かな?」
もう私知らないからな。
子猫はさっきから鳴かなくなっている。純粋に寝ているのならいいのだけれど、人間で言う気絶状態だったらことだ。でも、それを前に出したところでどうにかなるわけでもないことを私はよく知っている。多分、真白くんも。
他愛ない話をしながら、病院に子猫を連れて行って。衰弱しているだけで健康体だというお墨付きをもらった子猫──真雪ちゃんは、真白くんの腕の中ですやすや眠っていた。
「真白くん、ご家族に連絡は?」
「あ、まだしてないです」
「しておきなね。柳くんも。それと、家に注射器とかはないよね?」
「ないですね」
「うちで使ってるの、ひとつあげるから。育て方は大丈夫なんでしょう?」
はい、と真白くんが頷いたのを見て、お母さんが満足そうに頷いた。会計をするところで真白くんが俺が出すとひと悶着あったが、これくらいいいからとお母さんが押し切ってまずは私の家に向かうことになった。
「真雪ちゃん、無事でよかったね」
「うん。兄弟の分も長生きしてくれるといいんだけど」