気まぐれな君は


***


数日後、真雪が落ち着いたから家に来ないかと誘われた私は、躊躇いながらも真白くんの家に来ていた。勿論柳くんも一緒だし、家にはお母さんもいたので安心したのは内緒だ。


この前から、いやもっと前からかもしれない。出逢った時から気になってはいたし、倒れた真白くんを見て痛いくらいに心配することだってあった。でも、それは友達だからだと思っていた。もしかしたら違ったのかもしれないということに漸く気付いたのは、ここ数日真白くんを見ていて唐突に思ったことだ。


いつもはおちゃらけた感じなのに、真雪ちゃんの声を聞いた途端に真剣になって。しかもちゃんと真雪ちゃんを見つけて、的確な対応をして。捨てられた動物を拾う機会は早々ない、それでもちゃんと慌てずにいた真白くんがすごいと思って、それから。


その先は、まだ心の奥底に蓋をして押し込んだままだ。


だから、今日もちょっと意識しちゃったりしてなかったりなわけだけれど。行くか迷って、結局行くことになったのは、ひとえにお母さんのせいである。


お母さんに誘われたことを伝えたら、真雪ちゃんに会って来い、と言われたのだ。柳くんが一緒なら大丈夫だろうと。一応お母さんがいるかも聞いておきなさいとは言われたけど。


うちの母親は娘のそういうことについてどう考えているのだろうか。適当すぎやしないかと思ったが、これが通常運転だったことを思い出してやめた。


真雪ちゃんに会えること自体は嬉しいし、お母さんにもそう言われたことで私は吹っ切れて、遠慮なくお邪魔することにしたのだった。


お母さんに持たされた手土産片手に、二人と一緒に同じ電車に乗り込む。何度か行ったことのある真白くんの最寄り駅は流石に覚えた。真雪ちゃんの話を聞きながら真白くんが玄関のドアを開けると、ぱたぱたと音がして奥からお母さんがひょっこりと顔を出した。


「あらいらっしゃい、都築さん。あと冬馬くん」

「ただいま母さん、真雪は?」

「おかえり、真雪ならリビングで寝てるところ」

「おばさんお邪魔しまーす」

「お邪魔します! あの、これ少しですけど!」


あらあらありがとう、と素直に受け取ってくれたことに安心しつつ、上がってと言う真白くんに頷いて白川家に足を踏み入れる。先にリビングに向かった柳くんを追う形でそっと顔を覗かせると、隅っこに置いてある小さい段ボールの中に真雪ちゃんが丸くなって寝ていた。


「か、かわいい……」


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