気まぐれな君は
「一応、小三から。と言っても、書道というより習字だって先生にはよく言われるけど」
と言われても、私にはその違いがよく分からないけど。そんなに長い間習い事続けてるってすごい。
四人でわいわいと話をしていると、そういえば、と思い出したような様子で茉莉が手を叩いた。それまでの話を中断して、茉莉に視線を送る。嗚呼ごめん、と軽く謝った茉莉は、私を見て首を傾げた。
「雫は白川くんと知り合い?」
「へ?」
「いや、今朝話してたから。真白くんって呼んでるし」
「え、だって真白って呼ばれてるって言われたから……別に知り合いじゃないよ?」
「ふうん……いつものかなあ」
「いつもの?」
「ということは、茉莉は白川くん、と知り合いなの?」
若葉の質問に、ごもっとも、と思いながら頷いた。
中学一緒なんだよ、と答えた茉莉に、私たち三人が納得する。何か言葉を探している茉莉を待っていると、漸く言葉を見つけたのか嗚呼、と口を開いた。
「なんて言うか、気まぐれ? マイペース? 我が道を行く? そんな感じでさ、女子でもあまり真白って呼んでる人いないと思うよ。懐く人には懐くんだけど差が激しいから。猫みたいで」
「……それ本当?」
あんなに初対面からあだ名で呼んで、みたいな感じで言ってきて、あんなふうに教室に入ってきたとはとても思えない。
嗚呼でも、確かにマイペースだから気にしないのか、と思い至る。でも、私に対しては最初から懐いていた、というのか、友達みたいに話してきたから、まさか違うなんて思わなかった。
「本当本当。だから凄い珍しいなあって思ったんだよね」
「でもマイペースはいつもだからいつもの、ってこと?」
「うんそう。まあ確かに、雫はちょっと安心するっていうか」
「それ分かる。とても末っ子とは思えないよねえ、末っ子って甘えんぼってよく言うけど雫はそうは見えない」
「待って雫って何人兄弟なの」
「下に兄弟いると思ってた」
それは正直よく言われる。
確かに、お兄ちゃんやお姉ちゃんとは年が離れているから、一人っ子みたいな環境で育ってきたのは確かだ。でもそこまで年が離れてるわけではないし、お兄ちゃんやお姉ちゃんともよく遊ぶし。強いて言うなら、お母さんが頼りないからかもしれないとは思う。
お母さんがしっかりしていないから、子供がしっかりするしかないのだ。