気まぐれな君は
それを言うと、事情を知っている若葉を除く二人が爆笑した。
「お母さん酷い言われよう」
「流石に、失礼……っ」
「とか言いながら二人とも結局笑ってるから同罪ね?」
ひいひい言いながら笑う二人に、私も苦笑するしかできない。否定はできないし、寧ろそれを話の糸口としている私である。
まあうちのお母さんなんてそんなもん、と付け加えると、更に笑い出してしまった二人に困って若葉に視線を送った。一緒になって笑っていたが、若葉、貴女中学時代に何回か会ってるでしょう。
なんだかんだ学校行事には顔を出すことの多かった母なので、中学の同級生に顔と性格は割と割れている。
「あー面白かった。今度雫のお母さんに会ってみたいわ」
「文化祭とか来ると思うよ。あと授業参観。行事はちゃんと顔出しに来るから」
「えーそれは羨ましい。うちんとこ全然来ないよ」
「あーうちも。PTA面倒だからって」
「あ、それうち割と積極的に参加するタイプだから」
目立ちたがりというかなんというか。そういうところはしっかりしている、というか、ちゃっかりしてる、というか。
我が母ながら生態は謎であるというのが兄弟共通の見解である。
「で、そんなお母様、今日は?」
「なんか今日は先帰るって言って帰ったよ。入学式卒業式は子供同士で色々あるでしょって」
「何その気遣い。雫のママ最高か」
「うちママってキャラじゃない」
「確かにあれはママではない」
私の言葉に、若葉が記憶を探りながら発言を補強する。ふ、と吹き出す二人、いい加減この話題から離れないと終わらなくなってしまう。
「そういえば三人ともお昼は?」
「てきとー。食べてってもいいし帰ってもいいしって感じ。家いないからコンビニになりそうだけど」
「私もそんな感じかなあ」
閑話休題、と私が話題を変えると、顔を見合わせつつ茉莉が答えた。それに絵里が同意して、私は若葉に視線を送る。
あたしはそもそも考えてなかったや、と一番酷い答えが返ってきたため、軽く頭を叩いておいた。
とりあえず駅に移動しようか、という話になって荷物を纏める。そういえば連絡先も聞いてないからちゃんと聞かないと。何のために若葉に声をかけてもらったのか。
隣の真白くんの席を見て結局彼はなんなんだろう、と思いながら、私は三人と駅へ向かった。