気まぐれな君は
結構話をしたから? そうでもないと思うんだけど。真白くんが人懐こいから? そうなのかな、でも見ているとそこまでいろんな人とじゃれてる印象はなかった。
正直、よく分からない。真白くんは、謎だ。
だって、昨日会ったばかりでこんなにも私の中にするりと入ってきている。私だって、そこまで誰とでも仲良くなるわけじゃない。寧ろ、若葉には昨日あのあとちょっとびっくりされた。私はどちらかというと、警戒してすぐには仲良くなれないタイプだ。
気付くと自己紹介は終わって、休み時間になっていた。考えているうちに、冬馬くんの名字が柳だということを知った。これからは柳くんと呼ぶことにしよう。まだ本人に向けて名前を呼んだことはないし。
そんなことを考えていると、隣の真白くんに名前を呼ばれていることに気付いた。
「都築さん」
「……ん?」
「猫、飼ってるの?」
「え、あ、うん。ちっちゃい頃からずっと。一時預かり所みたいなこともしてるし。だから猫がいるのが当たり前みたいな感じなんだあ」
これは嘘じゃなくて、本当だ。
曰く、お母さんのお兄ちゃんがその昔捨て猫を拾ったところから始まっているらしい。その頃はずっと飼っていたわけではなくて、たまに捨て猫を見つけると飼っていたくらいだったそうで、その子猫たちもあまり長生きしなかったんだとか。
それが私のお母さんにも受け継がれて、うちには私が生まれる前からずっと猫がいる。ボランティアで、捨て猫の一時預かりもしていたりする。私もそのおかげで弱った猫たちの面倒を見ることは慣れていた。あ、自己紹介でこのことも言っておけばよかったな。春は捨て猫が多い。
その猫の写真を撮るのが私の役目、ホームページやSNSで拡散するのが一番上の兄の役目、ポスターを作って情報を広めるのがお姉ちゃんの役目。
お母さんは専業主婦なので、基本的に家にいて猫たちの世話をしている。動物看護師をしていたこともあるお母さんは猫たちにとって貴重な存在だ。ただしそのせいで時々嫌われていたりもする。
でも、猫がそんなに気になったのかな。確かにここまで猫にまみれた生活をしてるのは珍しいと思うけど、自己紹介では写真撮るのが趣味としか言っていないし。まあ、真白くんも写真好きとは言ってたけど。
「……真白くん?」