彼女は王子様
 住居も無くし、保証人となってくれる相手すら失ってしまった今では祐は明日の生活にも困るのが現状。
 何が出来るかと問われればベースとしか答えられない。高校卒業と共に大阪の実家を飛び出した祐は一人で生活をしていく術を持ち合わせて居なかった。
「早いとこ次のバンド見付けないとアカンですよねぇ……」
「引き抜きとか、他のところから声掛かって無かったの?」
「無いっス」
 そう言って祐はグラスのミルクを一気に飲み干す。
 祐がまだ未成年である事から何とか力になりたいとは思うヤマであったが、ヤマも妻子ある身なので簡単には全ての世話をしてやれないのが現実だった。
 とは言えど元は今も名のある有名ヴィジュアル系バンドで活躍していたヤマは音楽を志す青年達が途中で挫折をしてどの様な末路を迎えていったのかも知っていたので、その彼らに今の祐の姿を重ねて酷く同情心を駆られていた。
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