ドクターと恋を始めました。【完】


「人を信じるだけでも本当に怖くて、

…すぐに壊れそうで、いなくなりそうで。
大切な存在にしたくない、

ただ、そんな気持ちでいっぱいで…。」



人間というものは儚く脆い生き物だからこそ
もう、あんな思いはしたくなかった。



関わることで大切な存在になって、

いつの間にか、隣にいなくて、

怖かった。



「…琴音は僕のずっと抱いてきた気持ちを今まで考えたことあるのか?」


「…え?」


「正直に言うと、あの事故があった時は琴音を恨んだよ。…何の理由もなくね。

その後も、今までも、恨んできた。

琴音の顔を見る度に今も苦しくなる。」


「…」



そんなこと、言われなくてもわかってる。
ずっと、恨まれ続けたことくらい。



「琴音の顔を見る度に若い頃の美佐の顔にソックリだから、僕だって辛いんだよ。」



初めて聞くお父さんの本音。



「琴音は美佐に似てるからそばに置いておくことが精神的に苦痛だった。」



お父さんの頬に流れる涙。


あたしは初めて父の涙を見た気がする。



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