ドクターと恋を始めました。【完】
((ガラッ))とドアの開く音がした。
「これは海堂先生、こんにちは。」
病室に来たのは琴音のお父さんと秘書さん。
仕事の途中で来たのかスーツ姿。
「こんにちは、千葉さんと榊さん。
琴音ちゃん、さっき寝ちゃいましたよ。」
「構わんさ、長居は出来んからな。」
そう言いながら、琴音の頭を撫でた。
愛しそうな目で。
携帯のバイブ音がした。
「社長、少し失礼します。」
そう言って、秘書の榊さんは病室から出ていってしまった。
正直、結構気まづい。
沈黙が続いたが先に沈黙を破ったのは千葉さんだった。
「あの事件以降、僕は琴音に酷い言葉を浴びせ続け親戚一同は琴音を邪魔者扱いするようになってね…、」
「…」
「僕自身も己を忘れ、女と仕事に明け暮れて琴音の面倒も見ずに12年間を逃げて来たよ。
…琴音と向き合った時、亡き妻を思い出しそうで怖くてずっと避けてきてね…。」
「琴音ちゃんを邪魔者だと思ったことは今までありますか?」
「ハハッ、君もずるい質問をするね。
…正直言えば、あったのかもしれないね。
妻が亡くなった当時は何も悪くない琴音を酷く責めてしまったよ。
僕は父親失格だな…。」
琴音のお父さんは、琴音と似て正直者だ。
「琴音ちゃんのPTSD……簡単に言うとトラウマですね、、それは治ってません。」