猫足バスタブに愛を
そんな浅はかな希望はすぐに廃れた。
男達が笑いながら出て行くと同時に、家が真っ赤に炎上した。
黒い煙をもくもくと立たせ、炎は家を飲み込んでいく。
…何をやっているんだ。
まだ家の中には私の親がいるというのに、この人達は何をやっている?
この人達はこの期に及んで何がやりたいんだよ。
「や……っお父、さん!お母さ…っ!」
口を遮っていた手を無理矢理退かし、途切れながらも叫んだ。
――…何度も言うが、こんな変化を望んだわけじゃないんだ。私は。
こんなの、あんまりだよ。
…こんなの。
窓から出る黒い煙を眺めながら、手を強く握り締めた。
少し伸びた爪が食い込んだ気がしたが、痛みは感じなかった。
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