猫足バスタブに愛を




そんな浅はかな希望はすぐに廃れた。




男達が笑いながら出て行くと同時に、家が真っ赤に炎上した。



黒い煙をもくもくと立たせ、炎は家を飲み込んでいく。




…何をやっているんだ。



まだ家の中には私の親がいるというのに、この人達は何をやっている?






この人達はこの期に及んで何がやりたいんだよ。





「や……っお父、さん!お母さ…っ!」





口を遮っていた手を無理矢理退かし、途切れながらも叫んだ。





――…何度も言うが、こんな変化を望んだわけじゃないんだ。私は。





こんなの、あんまりだよ。




…こんなの。





窓から出る黒い煙を眺めながら、手を強く握り締めた。



少し伸びた爪が食い込んだ気がしたが、痛みは感じなかった。





_
< 10 / 20 >

この作品をシェア

pagetop