猫足バスタブに愛を
「逃げよう!」
耳元で、焦りが混じった声が聞こえる。
それと同時に左手引がかれ、彼と私は勢いよく走り出した。
足が縺れて転びそうになりながらも、無我夢中で走った。
どこに行くのか分からない。
もしかしたら変なところに連れていかれちゃうかもしれない。
それとも今殺されるかもしれない。
けどそれでもいいと思った。
そんなことを考えている自分は、やっぱり臆病者だとも思った。
でも不思議と恐怖は感じなかった。
なんて言って後で後悔するんだ、きっと。
目に見えている。
それでも、私の“これから”をどうするのかは、目の前のこの男次第なんだ。
なら私なりに彼を信じようと思う。
これから何をされるか分からないけど、でも、一瞬でも助けてくれた彼を信じようと思った。
今の私にはそれしか出来ないから。
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