猫足バスタブに愛を
そいつは不敵に笑っていて、何だか気持ち悪かった。
なんて言ったら殺されるだろうか。
ひじ掛けに体を預けながら、彼は続ける。
「とりあえず座りなよ」
一応ハイと返事をして、ガラスのテーブルを挟んだ向かい側のソファーを一瞥する。
ああ、座りたくない。
こいつの真ん前に座って話をするなんて、考えただけでも鳥肌が立つ。
とりあえず、彼の斜め前に恐る恐る座った。
目の前にはマグカップ。
湯気が立っていることから、先程入れたんだろう。
中は見るからにホットミルクだろうか。
甘い香りが鼻をくすぐった。
「それ飲んで落ち着きな?」
“それ”とは多分ホットミルクのこと。
これを飲めと?
毒でも入ってんじゃないだろうか。
安楽死ならまだしも、のたうちまわって死ぬなんてやだよ。
そんな考えが分かったのか、それともいつまでたっても飲まない私を不審に思ったのか、「そんなに警戒しなくていいから」と彼は笑った。
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