猫足バスタブに愛を




足がすくんでその場から動けない。


なんて自分はチキンなんだろうか。

だから強い心が欲しいと言ったのに。




「あ、」




足が縺れて尻餅をついてしまった。



やはりそれは私にとって不可能なのだろうか。


でも生きていれば、少なからず今よりは強くなれる気がする。



今よりは幸せになれる気がする。





なんて、今そんなこと考えても仕方がないのに。




「おい、なんかこっちで音がしたぞ」




ああ、嫌な予感。



きっとさっきの尻餅が聞こえたのだろう。


下に落ちていた枝も、ポキッと折れた音がしたし。





なんて最悪な状況なのだろうか。




もう一度言うが、私はこんな変化を求めていたわけじゃない。



ただ、平凡で退屈過ぎる毎日から脱出したかっただけだ。




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