猫足バスタブに愛を
でもどんなにもがいても、体はがっちり固定されていて逃れることができない。
…もうヤダ。泣きそう。
カタンという音と同時に、覆面男が顔を覗かせた。
「…んだよ。誰もいねぇじゃん」
物陰に隠れていたお陰か、幸いにも見付からずにすんだ。
隠れていたというか、誰かに引っ張られたせいなんだけども。
その覆面男が窓から離れるまで、私の後ろにいる男は動かなかった。
この人は何がしたいのだろうか。
殺したいならさっさと殺せばいいのに。
この沈黙が逆に恐いんだ。
家の中からは覆面男達の笑い声が聞こえる。
それを聞くと、悲しさと悔しさが込み上げてくる。
金ならとっとと持ち去っていけばいい。
だから早く出て行ってほしい。
早く安全な場所で電話したいのだ。
もしかしたら親は完全に死んでないかも知れない。
だから早く救急車を…。
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