猫足バスタブに愛を


でもどんなにもがいても、体はがっちり固定されていて逃れることができない。



…もうヤダ。泣きそう。





カタンという音と同時に、覆面男が顔を覗かせた。





「…んだよ。誰もいねぇじゃん」




物陰に隠れていたお陰か、幸いにも見付からずにすんだ。


隠れていたというか、誰かに引っ張られたせいなんだけども。





その覆面男が窓から離れるまで、私の後ろにいる男は動かなかった。



この人は何がしたいのだろうか。


殺したいならさっさと殺せばいいのに。






この沈黙が逆に恐いんだ。





家の中からは覆面男達の笑い声が聞こえる。




それを聞くと、悲しさと悔しさが込み上げてくる。






金ならとっとと持ち去っていけばいい。



だから早く出て行ってほしい。




早く安全な場所で電話したいのだ。


もしかしたら親は完全に死んでないかも知れない。




だから早く救急車を…。




_
< 9 / 20 >

この作品をシェア

pagetop