憂
[1] 窓際2 夏樹side
いつも見ていた。
隣の棟の一つ下の学年の女の子。
お互い4階の校門から4つ目の教室。
俺も彼女も一番後ろの窓側の席で
俺の席から彼女の勉強してる顔がよく見えた。
窓際の暖かい席なのに寝ずにしっかり勉強していて。
たまに互いの校舎の間で準備運動してる同級生を眺めてる。
たまに見る寝顔も可愛くて、こんなときに自分の視力の良さを褒め称えたくなる。
移動教室のとき、たまに会う。
月曜日の3時間目の前は、校門側の渡り廊下。
水曜日の6時間目の前は、下駄箱。
木曜日の1、2時間目は彼女のクラスは体育で、3時間目からは俺らだから、速攻で制服から体操着に着替えてダッシュで会いに行く。
これだけじゃない。
彼女に会うたびに、彼女のクラスの時間割まで把握できてしまう。
今までは話しかけることはできなかった。
一度、話してみたい。
ずっとそう思っていた。
別に勇気がなかったわけじゃない。
俺はそれなりにモテるし。
相手が誰だろうが話しかけられる。
ただ、タイミングがなかっただけ。
そんな言い訳をして
ただ彼女を見つめるだけ。
彼女を好きな気持ちはドンドン募っていく。
けれど、どうやら彼女を狙ってるのは俺だけじゃないみたいで…
このままではいられない。
そう思い動き出した放課後。
教室を覗き込むがこんな日に限って見当たらない。
「藤堂先輩?どうしたんですか?」
クラスの女の子が俺に話しかけてきてくれた。
誰だこいつ。
頭の中のハテナマークは落ち着かせ
俺は彼女に微笑む。
「あの、窓際の一番後ろの席のさ、女の子って帰っちゃった?」
「あー、遥香は先生に呼ばれて。待ってればそのうち戻ってくると思います。」
「そっか。ありがとうね。」
「…いいえ。」
彼女は俯き気味に微笑んで俺の元を去ろうとする。
「あ、待って。」
「え?」
「君、名前は?」
「岬歩美です。」
「ありがと。歩美ちゃん。助かった。」
「…いえ。こちらこそ。」
…こちらこそ?
そのまま走り去ってしまった彼女から
俺は視線を彼女の席に戻す。
あああ、もう!タイミング悪いな!!
イラつきながらも
きっともう今日を逃せば会いに来るタイミングは掴めなくなる。
そう分かっているから俺は彼女の席に向かう。
彼女のクラスメイトにジロジロ見られながらも俺は彼女の席に座る。
「あ、名前。」
さっきの歩美ちゃんは“遥香”って呼んでたよね。
中から教科書を抜き取り名前を確認する。
櫻井遥香
遥香
…かわいい、名前。
「はあ…」
いつ、帰って来るかな。
らしくもなくドキドキしてる。
机に突っ伏して窓から反対側の自分の校舎を見る。
ああ、見える。
もしかしたら、俺のこと知っててくれてるかも、なんて…
…ないな。
やめよう、変な妄想は。
いつも見ていた。
隣の棟の一つ下の学年の女の子。
お互い4階の校門から4つ目の教室。
俺も彼女も一番後ろの窓側の席で
俺の席から彼女の勉強してる顔がよく見えた。
窓際の暖かい席なのに寝ずにしっかり勉強していて。
たまに互いの校舎の間で準備運動してる同級生を眺めてる。
たまに見る寝顔も可愛くて、こんなときに自分の視力の良さを褒め称えたくなる。
移動教室のとき、たまに会う。
月曜日の3時間目の前は、校門側の渡り廊下。
水曜日の6時間目の前は、下駄箱。
木曜日の1、2時間目は彼女のクラスは体育で、3時間目からは俺らだから、速攻で制服から体操着に着替えてダッシュで会いに行く。
これだけじゃない。
彼女に会うたびに、彼女のクラスの時間割まで把握できてしまう。
今までは話しかけることはできなかった。
一度、話してみたい。
ずっとそう思っていた。
別に勇気がなかったわけじゃない。
俺はそれなりにモテるし。
相手が誰だろうが話しかけられる。
ただ、タイミングがなかっただけ。
そんな言い訳をして
ただ彼女を見つめるだけ。
彼女を好きな気持ちはドンドン募っていく。
けれど、どうやら彼女を狙ってるのは俺だけじゃないみたいで…
このままではいられない。
そう思い動き出した放課後。
教室を覗き込むがこんな日に限って見当たらない。
「藤堂先輩?どうしたんですか?」
クラスの女の子が俺に話しかけてきてくれた。
誰だこいつ。
頭の中のハテナマークは落ち着かせ
俺は彼女に微笑む。
「あの、窓際の一番後ろの席のさ、女の子って帰っちゃった?」
「あー、遥香は先生に呼ばれて。待ってればそのうち戻ってくると思います。」
「そっか。ありがとうね。」
「…いいえ。」
彼女は俯き気味に微笑んで俺の元を去ろうとする。
「あ、待って。」
「え?」
「君、名前は?」
「岬歩美です。」
「ありがと。歩美ちゃん。助かった。」
「…いえ。こちらこそ。」
…こちらこそ?
そのまま走り去ってしまった彼女から
俺は視線を彼女の席に戻す。
あああ、もう!タイミング悪いな!!
イラつきながらも
きっともう今日を逃せば会いに来るタイミングは掴めなくなる。
そう分かっているから俺は彼女の席に向かう。
彼女のクラスメイトにジロジロ見られながらも俺は彼女の席に座る。
「あ、名前。」
さっきの歩美ちゃんは“遥香”って呼んでたよね。
中から教科書を抜き取り名前を確認する。
櫻井遥香
遥香
…かわいい、名前。
「はあ…」
いつ、帰って来るかな。
らしくもなくドキドキしてる。
机に突っ伏して窓から反対側の自分の校舎を見る。
ああ、見える。
もしかしたら、俺のこと知っててくれてるかも、なんて…
…ないな。
やめよう、変な妄想は。