恋と呼ばせて
「ただいま。」
いつものようにテレビの音が響く中、こちらに駆け寄ってくる音が聞こえる。
「遅かったな、電話かけたのに何で出ないの?
待ってたんだけど。」
「ごめん。
人といたから出れなかった。」
「……ふぅん。
酒飲む?買って来たから冷蔵庫に」
「会って欲しい人がいるの。」
私の言葉に動きが止まる。
ゆっくり振り返りこちらを見る顔は私の心臓をドキドキさせるのに充分だ。
「……言ったの?」
うん。と頷くと、分かった。とテレビを消して玄関まで歩いて来た。
扉をゆっくり開けて、日下部君にどうぞ。と中に入ってもらう。
「…はじめまして。
日下部と申します。」
「何か言いたい事がおありのようで?」
ピリつく雰囲気の中、リビングに上がってもらいお茶を入れる。
「単刀直入に言うと、彼女と別れて欲しいんです。」
私が席に着いた瞬間、唐突に言い出すのでびっくりしてしまった。