俺の青い春
クラスメイトの〝美花〟は俺の想像どおり、泣き腫らした顔をしていた。
卒業証書を片手に「よいしょっ」と俺の隣に座る。
「卒業しちゃったねー」
「うん」
「匠(たくみ)は就職だっけ?」
「そ、地元の整備工場」
「そっかあ」
美花は遠い大学に通うために春からこの町を出てひとり暮らしをする。
地球の裏側じゃないんだし、すぐ会えるよってみんなには言ってたけど、ずっと繋がってられる人なんてほんの一握りで。
傍にいなければ、近くにいなければ疎遠になっていく人たちのほうがきっと多いんだろう。
仕方ない。
それが大人になるってことだ。
自分の都合ではどうにもならないこと、イヤなことも笑顔で応えて、広いようですごく狭苦しい場所に俺たちは進んでいく。
「ごめんね」
そんな言葉が桜の匂いと共に俺に届いた。
「ごめんってなにが?」
わざと聞いた。
知っているくせに。分かっているくせに。
美花は言いづらそうに目を泳がせて、焦げ茶色の髪の毛を耳にかけた。
「あの日の夜のこと」