俺の青い春
「匠が優しさでしてくれたこと。バカだって思われるかもしれないけどあの時、匠がいなかったら私ダメだった」
「………」
「きっと、あの夜を越えられなかった」
卒業式で流した涙とは違う色の涙。
距離は遠ざかった。だけど今俺たちは隣に並んで、同じ空を見上げている。
「ずっと言おうと思ってた。私は後悔してない。匠がいたから私は今笑えてる」
とっても晴れやかな顔で、美花はまっすぐに俺を見る。
「匠、ありがとう。あの夜、一緒にいてくれて」
あれから後ろ姿ばかりを見る日々だった。
久しぶりに真正面から見た美花はすげー綺麗で凛としてて。
あんなにふらふらと危なっかしいヤツだったのに、いつの間にこんなに大人になってしまったんだろう。
「元気でね、大好きだった」
美花はとてもいい顔をしてた。
迷いもなく、これからの未来を精いっぱい全力で頑張ろうって顔。
「美花」
屋上のドアノブに手をかけるその背中に名前を呼んだ。
「んー?」
ああ、その首を傾げて微笑む感じ。
色々と変わったけれど、変わっていないものがある。
残しておきたいものがある。
言わなきゃいけないこともある。