ミステリアスなユージーン
大女将が待っているもの。

話していればわかる。眼の輝きを見ていれば分かる。

自分に厳しく気高い彼女は、病気なんかを理由にしたりしない人だ。

同情や憐れみなどは彼女に失礼なのだ。

東京の店舗拡大は、彼女の残りの人生を懸けた夢。

私はそれを、私の持っている限りの力で手助けしたい。

エレベーターを出ると、広い総合受け付けを突っ切り、私は正面玄関から外に出た。

同時にスマホを取り出し安藤君に連絡を取る。

『菜月さん?』

「安藤君、お願いがあるの」

『どうしたんですか?何でも言ってください』

ごめんね安藤君。でも、助けて。

私は心で呟いた言葉を、そのまま安藤君に告げた。

∴☆∴☆∴☆∴

「安藤君、ちょっと休憩しよう」

二階の呉服桜寿新店舗のSD現場で、私は業者さん達が忙しく働く中、安藤君を見上げた。

「あ、はい、俺コンビニ行ってきます」

「一緒に行こう。さっき課長が見に来てくれたじゃん?その時にお小遣いくれたんだよね!業者さんの分も!」

「マジですか?ラッキー。じゃあ行きましょう」

「ん」
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