ミステリアスなユージーン
……確かに佐渡君の仕事ぶりは、眼を見張るような鮮やかさだった。

施工業者がガチ合って作業が滞るのを上手く防いだり、業者さんに頼らなくても私達に出来る作業は器用にこなしてくれた。

でも……。

私は少し咳払いをすると、安藤君を見上げた。

「安藤君、凄く成長したね。この連休中、仕事を助けてもらって本当に驚いたよ。新入社員の頃はさ、毎日安積くんに叱られてしょぼくれていたのに」

私がそう言うと、安藤君は更に困ったように頭を掻いた。

「佐渡君は確かに私達がスムーズに仕事が出来るように上手くサポートしてくれたけど、やっぱりこんないいSDが出来上がったのは現場作業をしっかりやれるようになった安藤君の力が大きいよ。本当にありがとう」

私が安藤君の真正面に立ち、ペコリと頭を下げると、彼は何とも言えない顔をして私を見つめた。

「菜月さんって、佐渡さんが好きなんですか?」

「えっ?」

ドキッとして思わず硬直する私に、安藤君が寂しそうに続けた。

「……佐渡さんをよく眼で追ってるから……」

「……」

純粋に私にそう問う安藤君に、嘘はつけなかった。

「うん」

「……そうですか……」

呟いた安藤君は一方の壁にディスプレイされた鮮やかな京和傘を見つめながら、ホッと息をついた。
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