ミステリアスなユージーン
途端に、部屋の中央で向かい合っている私達が不自然に思えた。

……佐渡君ってなんか鋭いところがあるから察知したりして……。

やだな、突っ込まれたら。

その時、

「佐渡さん、最終チェック完了しました。僕、このまま直帰します」

「分かりました。お疲れさまでした」

「お疲れさま。あと一日しか休みないけど、ゆっくり休んでね。ありがとう安藤君」

私の言葉に安藤君が微笑み、ボディバッグを背負うとフワリと笑った。

「僕こそ菜月さんの仕事を間近で勉強できて嬉しかったです。ありがとうございました」

ドアの外に消えていった安藤君を見送りホッと息をついた私を見て、佐渡君が無愛想な声を出した。

「……告白でもされたんですか?顔が赤いですけど」

「はい?!」

な、なによ、やっぱり鋭いわね!

「そ、そんな訳ないでしょ!この呉服桜寿の二階店舗、凄く素晴らしい出来だねって、二人で自画自賛してただけ!」

焦りを必死で隠しながらそう言うと、佐渡君は部屋中を見回して頷いた。

「確かに……良い出来です」

「……ほんと?」

佐渡君がしっかりと頷いた。

「はい。きっとこの店舗に来るお客は、幸せな気分になるはずです」

胸がギュッとした。
< 112 / 165 >

この作品をシェア

pagetop