ミステリアスなユージーン
ギュッと胸が軋む。

……嘘ばっかり。絶対ちゃんと聞かないでしょ。

そんな事言って、私が『好き』なんて言ったらどうするのよ。

嘘つき。佐渡君の嘘つき。

なんか、泣きたくなる。私、凄く弱い。

「……何もないよ。言いたいことなんて。じゃあ、連休明けね」

瞬間、佐渡君が私から視線をそらした。

たったそれだけの筈が、何故か瞳に影が落ちた気がした。

おまけにその影が、私の心にも流れ込む。

「……はい」

胸が重い。

佐渡君も嘘つきだけど、私も嘘つきだ。

言いたいことはちゃんとあるのに。



∴☆∴☆∴☆∴


その日の夜。

「ユージーンは《イケメン》、《エロい》、《毒》、《嘘つき》……結構な書かれようだわね、佐渡君も」

久々に二人だけの家飲み女子会を開いた私は、ゴクゴクとハイボールを飲む沙織を少し睨んだ。

「ちょっと!伏せ字にしてあるでしょ?エロいなんて書いてないじゃん」

「はいはい」

ジョッキを煽りながら冷蔵庫の《ユージーンスペース》を凝視する沙織は、まるで私よりもこの家の住人みたいだ。

「それよりさ、凄い話って何よ?」

『今夜はね、凄い話を持っていくわよ』

そもそも何かスクープを入手したとかで家に来たはずの沙織は、ガンガン酒を煽り私とユージーンの事ばかりを聞きたがっている。

「新庄課長の事よ。玲奈、あんたに直で話したかったみたいだけど、あんた連休中激務だったじゃん?玲奈も田舎帰らないといけなかったからさ、代わりに私がしっかり聞いてきたってわけよ」

胸がキュッとして、何だか嫌な予感がした。
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