ミステリアスなユージーン
「……」

黙り込む私を、沙織が見つめた。

「菜月……心当たりあったりする?」

……どうしよう。原因が……私だったら。

私はユルリと首を振る事しか出来なかった。

「……わからない。一度はちゃんと断った。そしたら、課長が『話がある』って……でも、その時も佐渡君がうまく助けてくれて……課長とはそれ以来プライベートな話はしてない……連休中は、呉服桜寿二階店舗の施工中だった私や安藤君の様子を見に来てくれたけど、いつもの通り、仕事の顔だったし変じゃなかった」

「……そっか……とにかく、二人きりにはならない方がいいわよ。今の課長はヤバイわ。もしもあんたが課長に会ってるところを新田さん側に見られたりしたら……」

「分かった。気を付けるよ」

……課長……。

課長とは……男女の関係を経て今はただの上司と部下だ。

でも嫌いじゃないし、上司として尊敬できる人間だ。

どうでもいい人じゃないから、そういう事を聞くとやっぱり気になってしまう。

この日私は、胸がモヤモヤしてなかなか眠りにつけなかった。
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