ミステリアスなユージーン

∴☆∴☆∴☆∴

翌日。

連休中仕事漬けだった私は、最終日の今日、朝早く起きて溜まっていた家事をこなした。

昨夜は家飲みの前に、見るに見かねた沙織が大量の洗濯を手伝ってくれたからかなり助かった。

だって洗濯って、畳むまでが洗濯でしょ?正直大嫌いなんだよね。

掃除機をかけてからシャワーを浴び、メイクをすると買い出しに出掛ける。

今日は自炊をする予定だ。

連休中はほぼコンビニかスーパーのお総菜ばかりに頼っていたから。

料理は得意じゃないけどたまには自炊して、作ったものを小分けにしてストックしておく。

仕事で遅く帰っても温めてすぐ食べられるから便利だし、それに何より『私、ちゃんと自炊してます』っていう自分に対しての安心感が欲しいしね。

それから今日はね、待ちに待った大イベントがあるんだよね。

ああ、この日を糧に私は仕事を頑張り続けたと言っても過言ではない。


『はあ?!私の誘いを断ってあのBL漫画家の瀬戸カナデのサイン会に行くってか?!』

沙織はあからさまにムカついた顔をしていたけど、沙織ならいつでも遊べるもん。

だけど瀬戸カナデ先生にはそう会えないもの。

先生の人気コミックの完全受注生産限定のDVD&Blu-rayを購入して、尚且つ抽選に当たらなきゃ握手会には参加出来ないんだから。

実は私、なんと瀬戸カナデ先生の握手会には四回連続当選してるのよね。

ああ、久々に先生に会えると思うと凄くドキドキする。

時計を見るともうすぐ十時になるところだった。

マンションのエントランスを出ると、金色の光が辺りに降り注いでいて綺麗。

気分もアガる。

私は駅へと足を進めると、頬を撫でる爽やかな風に微笑んだ。
< 118 / 165 >

この作品をシェア

pagetop