ミステリアスなユージーン
28歳の男性を『子』と表現するのも変かもしれないけど。

自分を高評価するのは実績の証かも知れないが、引っ掛かるのは『一週間で完璧にマスター出来る』の部分だ。

……それって……このSD課の仕事内容を理解した上での発言?

イラッとした。

私達の仕事をバカにするなという思いが、真っ先に胸の中を支配した。

「一週間でマスター出来るのは手順であって仕事じゃないよ」

その感情が私の声を硬くし、なにかを感じ取ったのか佐渡くんが顔をあげて私を見つめた。

「……」

「……」

お互いが真っ直ぐに見つめ合い、沈黙が流れる。

すると突然、佐渡くんが私から視線をそらしてフッと息だけで笑った。

その端正な顔がどこか私を小バカにしたような気がして無意識に眉が寄る。

「なに」

「……別に」

何が『別に』よ。なんか思ったから笑ったんでしょうが。

言い返してやりたかったけど、小さな事でムキになる女だと思われるのは嫌だった。

だから私は出来るだけ、ホントに出来るだけ冷静に佐渡君に告げた。

「一つだけ言っておくけど」

私がそう前置きして佐渡君を見ると、彼は手元の書類に落としていた視線をあげた。

「……なんです?」
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