ミステリアスなユージーン
『人の趣味をバカにするな』

以前誰かがそう言っているのを聞いた事がある。

……そうよ。私に他人の趣味をバカにする権利はない。

必死でそう思い込もうとしたけど、全身に鳥肌が立つのを抑えられない。

バカにしないけど……怖いわっ!!

中二階アイドルのアンナの胸が揺れる度に、佐渡君もまた揺れている。

しかも何だか彼の視線が、アンナの胸ばかりに集中している気がするじゃないか。

……ちょっと!

もしかして私の胸と心の中で比較してるんじゃないでしょうね?!

もしそうだったら……ムカつく。

その時急に、以前の私と佐渡君との会話が脳裏によみがえった。

確か、

『二次元の男の方が現実世界の男よりいいですか』

だの、

『今までロクな男と出逢わなかったんですね、お気の毒に』

だの言ったわよね?!

しかも、私の趣味を小馬鹿にして、

『趣味は……舞台観賞です。オペラやミュージカル、ああ、能も好きだな……芸術性の高い物が好みです』
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