ミステリアスなユージーン
とかなんとか言ってたわよね?!

私のBL漫画趣味を鼻で笑っておいて、自分は一階でも二階でもない中途半端な階数の胸のデカイアンナにご執心な訳?!

……何がオペラじゃ!何がミュージカルよ!これのどこが《能》なのよ?!よくも言ったなテメー!

その時、

「瀬戸カナデ先生のサイン会に来られた方は、会場が変更になりました!係員の指示に従ってこのまま真っ直ぐお進みください!」

マイクを通さない声が響き渡り、私はハッとして佐渡君から係員の顔へと視線を変えた。

……不覚にも本来の目的を忘れるところだったわ。

……そうよ。

思わず取り乱しそうになったけど、人の趣味をバカにするのはよくない。

佐渡君が中二階アイドルだろうが屋上アイドルに入れあげようが、彼の自由だ。

……私に関係ない。関係ないわ。

……まあ、沙織との家飲みでネタにはするけど。

ユージーンはやっぱ嘘つきです!ってね。

私は進み出した人の波に紛れて足を進めると、瀬戸カナデ先生との対面に思いを馳せた。
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